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慶應義塾大学先端生命科学研究所 からだ館

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ともに考えよう地域医療みらい図 ~自分のために 未来のために~

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院長リレーインタビュー 第五回


山形県立こころの医療センター
院長 神田秀人さん

 からだ館通信60号から始めた「ともに考えよう地域医療みらい図 院長リレーインタビュー」では、私たちが暮らす庄内地域の医療の現状について学んでいます。それぞれの院長の視点から見た地域医療の現状や目指す姿についてお話をうかがってきました。5回目の今回は、山形県立こころの医療センター神田秀人院長に伺いました。



Q. 山形県立こころの医療センターの役割を教えてください。

(神田)私たちの病院は県内で唯一の公立精神科単科の病院です。庄内地域の精神科医療の中核病院として、約70年その役割を果たしてきました。開設された当時は、統合失調症や躁うつ病などの入院治療が主体でしたが、近年、子どもの発達障害や心の病、大人の発達障害、うつ病また高齢化社会を反映した認知症の診断や治療など、精神科医療に求められるものが多岐にわたり、治療も入院から外来に移行しつつあります。
この時代の要請に応えるため、旧病院より交通の利便性の良い場所に移転し、精神科救急専門病棟や子どもの心の病やうつ病などを専門に扱う病棟、医療観察法病棟などを有する「山形県立こころの医療センター」を平成27年3月に開院しました。



「県立こころの医療センター」には精神障害者で作るフットサルチームがあります。2016年2月に大阪で開かれた国際大会に当時所属の患者選手が日本代表に選ばれました。大きな大会で本人もプレッシャーがありましたが、目標を持ち、そこに向かうことの大切さを私は選手に教えてもらいました。現在はコロナ禍のため練習はできませんが収束したら一刻も早く再開させたいことの一つです。

Q. 特色を教えてください。

精神科救急

(神田)精神科救急を運用しているのは庄内地区では当院のみです。これは24時間対応で精神的な問題、課題が悪化した方をいち早く適切に治療するものです。必要ならば入院していただき医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師、作業療法士、管理栄養士など専門のスタッフが患者さん一人ひとりの症状やニーズに合わせたチーム医療をおこないます。その後、退院後の社会復帰を目指しサポートしていきます。

医療観察

(神田)国の政策で、重大犯罪を起こした精神障害者に対して、裁判所の判断をうけて治療をします。薬物治療が主ですが、犯した罪に対する内省、洞察の深化、対人日常生活に必要なスキル獲得等、段階に応じた様々なプログラムを実施し見守ります。管轄は宮城や福島を含む南東北です。当初、医療観察は地域の皆さんの理解を得にくいことの一つでした。しかし、開設より無事に五年が経過し、全く問題がなく安心していただいています。今では病院を中心に街ができ、地域に必要な存在として認めていただけることを大変うれしく思っています。

児童思春期

(神田)私の専門で、対象は義務教育終了年齢までです。治療は精神療法と薬物療法が中心です。専用の外来には患者さんやご家族に和んでいただけるよう、絵本作家の荒井良二先生の絵がかけられています。またプレイルームがあり待ち時間も安心して過ごすことができますよ。外来は予約制ですが、受診希望者が多く、診察まで時間を頂いています。そこで優先順位の高い方から受診できるよう教育委員会とも連携しています。

訪問看護

(神田)主治医の依頼で、看護師や精神保健福祉士、作業療法士が患者さんのご自宅やグループホームに訪問しています。生活の場において医療やケアを継続し、患者さんやご家族の相談に応じて、安心した生活がおくれるようお手伝いをしています。

修正型電気けいれん療法

(神田)麻酔科の専門医がおり単科の精神科では実現が難しい、無けいれんの電気ショック療法ができます。電気ショックというと少し怖いイメージがあるかもしれませんが、精科の中では以前から有効な治療方法として認知されています。


出前講座

(神田)精神科認定看護師が地域に出かけて心の健康に役に立つ講演をしています。私自身も以前児童相談所の所長をしていたこともあり、虐待防止等をテーマに話をしました。私に、できることがあれば積極的に出かけていきたいと考えています。どんな親も虐待したくてする人はいません。でも子どもの育て方を知らずみんな悩んでいます。以前は近所に子どもをあやす人がいましたが、今はめったにみなくなりました。「赤ちゃんは泣くのが仕事でしょうがないよ」と経験を伝えてくれる人も減っている。ロールモデルの必要性を実感しています。ネット上にはコミュニティがありますが、母親が孤立しないよう母親の居場所も同様に必要です。自分たちだけでは難しいことも、保育園、幼稚園、療育部門とも連携しながら見守っていきたいと考えています。

Q. 病院のお食事にもこだわりがあるとおききしています。

(神田)有難いことに給食担当の職員、皆さんのモチベーションがとても高いのです。季節ごとの行事食も取り入れメリハリをつけて患者さんへ喜んでいただきたい気持ちが強くて。お陰で患者さんにも好評いただいています。これからも患者さんに食べることの楽しさや大切さを伝えていきたいと思います。


毎年魚屋さんから新鮮な寒鱈を仕入れ、調理師が腕によりをかけて作ります。
(山形県立こころの医療センターHPより)

栄養からのアプローチが重要

(神田)自分の専門である、思春期外来の患者さんに対して栄養の重要性を実感しており、私なりに研究しています。治療には当然投薬も必要ですが、その前にできることとして栄養的なアプローチを考えています。必要な栄養をきちんと摂取することは大変重要です。
日本では、小さく産んで大きく育てることを良しと考える人も多いのですが、実は小さくうまれることの心配なデータも上がってきているようです。そのため私は若い女性への健康改善が大事だと考えています。出産する前からずっと栄養のことを頭のどこかにおいてもらえるといいですね。やはり若い世代、中学高校生への教育も必要です。


12月2日、オンラインと対面のハイブリッド方式でインタビュー。聞き手はオンラインにて秋山美紀1) 、鶴岡タウンキャンパスにて、左手より齊藤彩1)、瀬尾利加子2 )1)慶應義塾大学からだ館 (株)瀬尾医療連携事務所

Q. 地域医療で課題と感じられていることは何ですか?

(神田)認知症の患者さんが増加して退院の支援が難しくなっていることです。地域の病院でも課題と伺っています。日本は認知症の方が急増しており、介護保険制度の機能だけでは十分フォローできません。私はこの件について、各自が「自分の問題」として、きちんと考えないといけないと思います。自分が高齢になって認知機能も当然落ちてくる。その時、どうしたらいいのか。認知症は一つの病院だけで解決できることはないですね。その中でまず私のできることは、認知症予防について、栄養や運動が重要であることを伝えていくことだと考えています。これはからだ館さんからの協力も期待したいですね。(了)


神田秀人先生ありがとうございました。次回もどうぞお楽しみに


<聞き手のプロフィール>

齊藤 彩
からだ館スタッフ、社会福祉士。
院長インタビューを通じて地域医療体制の情報を発信し、ここで暮らす皆で医療のことを考えていきたいと考えている。


瀬尾 利加子
(株)瀬尾医療連携事務所代表、鶴岡市地域医療を考える委員会委員長。
2015年まで鶴岡市内の病院に勤務後、 高齢社会から起こる医療課題の解決策に取り組むため起業。
みどりまち文庫を運営。


秋山 美紀
からだ館リーダー、慶應義塾大学教授 鶴岡市地域医療を考える市民委員会コーディネーター 中央社会保険医療協議会公益委員等。
約15年にわたり庄内地域の医療をウォッチする傍ら、国の医療政策にも関わる。



インタビュー後からだ館活動紹介させてもらいました(*^-^*)


(神田院長より)
「がんの治療に必要な情報がからだ館にはそろっているのですね。その情報に助けられる方もいると思います。大事な活動と思います。」とコメントを頂きました。ありがとうございました。



からだ館通信第64号(2022年2月28日号)掲載